自動車の操舵系と操安性

 本日の1冊

今回は、前回に続いてクルマに関する専門書を取り上げます。「自動車の操舵系と操安性」は山海堂から1996年に初版が発行された書籍です。同書は前回取り上げた「自動車のサスペンション」と同様、カヤバ工業の方々10名による執筆です。

カヤバといえば、ショックアブソーバーメーカーとしてご存じの方は多いと思いますが、パワーステアリング等の操舵系についても古くから製品を生産しています。同書は操舵系、特にパワーステアリングと4WS(4輪操舵)に主眼を置いて書かれています。

内容は、ステアリングの概要から油圧式パワーステアリング、電動式パワーステアリング、4輪操舵、そしてそれらの評価と将来について述べられています。

同書では、基礎理論編は無いのですが、各章で数式は度々出てきますので、やはり専門的知識が無いと理解が困難な点はそれなりにあると思います。

しかし、こちらにはステアリング装置の歴史に触れているページもあり、クルマ愛好家が興味を惹かれるであろう内容も含まれています。

前回サスペンション編でも触れましたが、操舵系においても性能評価でフィーリング試験の重要度は高いと述べています。人間の運転する車ですから、性能評価で人がどのように感じるかというテストは大事なのですね。

自分の経験を振り返ってみても、パワステで初期の電動式は油圧式に比べて違和感が強かった記憶がありますが、最近のものは言われなければ油圧式か電動式かを意識することはないほどにフィーリングに違和感が無くなっているように感じます。

最後に操舵系の将来について述べられていますが、その中で自動運転の可能性に触れられています。1990年代の中頃に発行された書物の中で既に自動運転について言及されているのは、自動車メーカーにごく近いサプライヤーはやはりかなり先のことまで見据えているのだなと感心します。

「自動車の操舵系と操安性」は専門的な書物だと思います。が、見方を変えてみて、アフターパーツとしてではなく、自動車メーカーに純正部品として直接的に製品を提供しているメーカーはどのような活動や開発を行っているか。その一端を知るために、メーカー技術者の著書を読んでみるのもよいのではないでしょうか。

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