ニューサイクリング 1963年5月号(No.5)
本日の1冊
今回は「ニューサイクリング 1963年5月号」を取り上げます。
ニューサイクリングの1963年5月号は、第5号です。
この号の表紙は、編集部によるデザインです。
第5号の目次をページ順に追うと、
口絵 洛西原谷を訪ねて
6 特集・スポーツ車の知識 はじめに
7 自転車の種類
9 フレーム
10 ホイール
13 トランスミッション
16 チエンジギヤ
17 ステアリング
20 サドル
21 その他
26 初心者のために ディレイラー・ランプの調整
30 外国カタログ紹介 カールトン(イギリス)
40 外国カタログ紹介 エリッテ・ディアマント(東独)
58 東海道苦闘記
64 南房総合宿記
68 自転車百科事典
68 自転車競技随想
70 交換案内
74 サイクリング東西南北
81 新製品ガイド ハンドルバーエンド、ハンドルテープ、ダブルチェンホイール、その他
84 パニアーバッグ
88 編集後記
となっています。
主な記事の内容を以下にご紹介します。
※各ページの題名が目次と異なる場合は、本文の題名を表記しています。
「特集・スポーツ車の知識 はじめに」
この特集は、自転車とくにスポーツ車の各部の名称や部品の種類について、ごく大ざっぱに一通りの事を書いたものです。「はじめに」では、この特集を組んだ目的を説明しています。
「自転車の種類」
当時の日本で考えられる車種を大きく三つ「実用車」「軽快車」「スポーツ車」に分類、さらに「実用車」は「常用実用車」と「運搬車」に分類し、「スポーツ車」は「競走車」「サイクリング用車」「通勤通学用車」に分類しています。そして、各車種の概要を説明しています。さらに、外国の車種分類としてイギリスとフランスの例をあげています。イギリスは「ユテイリティ(実用車)」「ロードスター(日常車)」「ツーリスト(日常、レクリエーション用)」「ライトロードスター(日常用)」「ライトツーリスト(レクリエーション用)」「スポーツロードスター(レクリエーション用)」「スポーツツーリスト(レクリエーション用)」「キャリヤ(運搬用)」「ライトウェイトツーリスト(オールランダー)」「スポーツモデル(レクリエーション用)」「クラブモデル(クラブラン用)」「タンデム」に分類。フランスは「ルーティール(日常用)」「ツーリズム(日常兼レクリエーション用)」「ツーリズムポリマルティプリ(レクリエーション用)」「グランドツーリズム(レクリエーション用)」「ランドネール(レクリエーション用)」「フェデラール(旅行用)」「シクロツーリズム(本格旅行用)」「シクロキャンピング(キャンプ用)」「シクロスポルティフ(レクリエーション用)」「デミクルス(レクリエーション・スピード用)」「クルスアマトウール(ロード用)」「クルスプロフェショネル(プロロード用)」「クルスピスト(トラックレース)」に分類。メーカーによって多少の差異はあるものの、大体このような分類になっていると説明しています。
「フレーム」
ここでは、ダイアモンドフレームを例に挙げて各部の名称を説明するとともに、材料の紹介と工作についてはサイクリング用と実用車のフレームの差をあげながらそれぞれの特徴を説明しています。また、フレームの種類について「ダイヤモンド型」「ダブルトップ型」「カーブドトップ型」「カーブドループ型」「スタガット型」「パラレル型」「イタリア型」「ベルソー型(ゆりかご型)」「ミキスト型」のシルエットを示しながら紹介しています。
「ホイール」
ここではホイールを構成する「タイヤ」「バルブ」「リム」「スポーク」「ハブ」に分けて説明しています。
「タイヤ」は、サイクリング車用として「ワイヤードオン(W/O)」、実用車用として「ビーデッド・エッジ(B/E)」、レース用として「チューブラー」を紹介しています。
「バルブ」は、タイヤチューブのバルブ形状の説明で、この項ではフレンチバルブ(仏式)とシュレーダー(米式)の説明があります。ウッズバルブ(英式)の紹介や説明はありません。
「リム」は、スポーツ車で一般的なものとして「エンドリックリム」をあげています。他には、「ウエストウッド(W/O用)」と「ウエストウッド(B/E用)」、「(B/E用)かまぼこ型」をイラストとともに紹介しています。
「スポーク」は、当時普通に使われているものとして14番を、他には15番と16番、またバデットスポークもあると説明しています。スポーク数は、一般は前32本で後40本、レース用として当時では前後36本も使われるようになったと紹介しています。
「ハブ」は、前用と後用、多段フリー用とシングル用の構造の違いを説明しています。フランジは大きいものと小さいものがあり、ラージフランジは大きさが3種類くらいあるとしています。
「トランスミッション」
ここでは伝動機構として「チェンホイール」「チェン」「フリー」「ペダル」をあげて説明しています。
「チェンホイール」は、ギヤ板とクランクの説明です。一体式の説明は無く、ギヤ板の歯数は普通は48Tか46Tを1枚で、使用目的によって二枚から三枚つけたものがあるとしています。また、写真ではフロントにギヤ4枚を付けたチェンホイールも載せています。クランクは3種類くらいで、サイクリング用車では普通六吋半(165mm)を使うと説明しています。クランクの取り付けについては、コッターピンを使用するものとコッターレスそれぞれの方法を説明しています。
「チェン」は、イラストで構造を示すとともに、厚さが八分ノ一吋のものと、三十二分ノ三吋のものとがあると紹介しています。また、トラック用ではローラーの無いブロックチェンを使っているとの説明もあります。
「フリー」は、実用車ではシングル、スポーツ車の場合は多段フリーまたはマルティフリーといった、3・4・5段のフリーを紹介しています。フリー機構は、ボスタイプとフラッシュタイプがあるとしています。そして注意事項として、「イタリーの有名なメーカーのカタログのチェンラインやハブの巾などがきちんと指定してある」表を示しながらチェンラインの調整について説明しています。
「ペダル」は、スポーツ車にはラットトラップを使うのが普通であるとしています。他にはレース用として外側が丸くなったクイル型やトークリップとストラップも紹介しています。
「変速機」
ここでは、リア変速機を中心に内装式と外装式を紹介しています。内装式はハブギヤといわれ、ハブ胴の中にチェンジ機構があるもので、当時では日本とイギリスで盛んに使われているとしています。外装式はディレイラーといわれ、摺動軸を用いるものとパンタグラフタイプについてその構造や特徴を説明しています。フロントディレイラーについては、写真でテコ式(ロッド式)とワイヤー式を紹介しています。
「ステアリング」
この項目では「ハンドル」「ハンドルステム」「ブレーキ」を取り上げています。
「ハンドル」は、当時多かったアップタイプとしてノースロードタイプ、オールランダータイプ、ノースロードフラット、ドロップタイプとしてマースタイプを紹介しています。サイクリングにおけるそれぞれのタイプの使用に適した場面や、ドロップハンドルの利点について解説しています。
「ハンドルステム」は、その構造と使用法について説明しています。ステムの材料は鉄製で、軽合金製は外国製品のみで当時日本製のものは無いといっています
「ブレーキ」は、スポーツ車用のブレーキとしてキャリパーブレーキを取り上げています。ブレーキの種類は「サイドプル」「センタープル」「カンティレバー」で当時のレースシーンでは引きの軽いセンタープルが全盛だと紹介しています。ブレーキレバーはイラストでフラット及びアップターン用ツーリングレバー、ドロップ用・ギドネットレバー、ドロップ用フッテッドレバーの三つを紹介しています。
「サドル」
この項目ではサドルとシートピラーの説明をしています。当時のサドルは革製が一般的で、プラスチック製はトラック用としてごく限られた用途と紹介しています。サドルの種類についてはイギリスのブルックスがつけた番号が一般に通用していると説明しています。サイクリング用としてドロップハンドルを付けたものや、ロードレース用としてはB17が一番使われていて、アップやフラットハンドル車には72番や73番が使われるとしています。サドルの固定については、実用車とスポーツ車それぞれの取り付け方法を紹介しています。
「その他」
この項目では「泥除」「キャリヤー」「ベル」「マッドフラップ」「スピードメーター」「水筒」「ポンプ」「ランプ」「アクセサリー」を取り上げています。
「泥除」は、サイクリング用車では軽合金かステンレス製が多く、生地のものの味を生かしています。
「キャリヤー」はフロント用とリア用があり、フロントのブレーキボルトの所とホークエンドにある穴によって止めるタイプはあまり一般市販品が無く、オーダーが多いと説明しています。
「ベル」は法律でつけなければならないものと決められているが、ホーンやブザーはスポーツ車ではあまり使わないので、ベルが良いだろうとしています。取付は日本では右手で鳴らす習慣で右側用が多く、外国では左手で鳴らすようで左側が多いと説明しています。
「マッドフラップ」は、イギリスタイプの自転車の前の泥除けの下に、ゴム又はビニール製のものを着けている。他の国では余り付けておらず、代わりに泥除けを長くしたりする方法をとっています。
「スピードメーター」は、好みの問題だとしています。日本製ではまだ良い物がなく、ドイツ製やイギリス製のものが良くできており、当時の日本でも購入できるといっています。また、イギリス製だけですが、サイクロメーターという前輪のハブに取り付けて走行距離だけがわかるものは使う人も相当いると紹介しています。
「水筒」は、アルミ製やポリエチレン製のものがあり、サイクリングの場合はダウンチューブかシートチューブにつけると説明しています。
「ポンプ」は、自転車の付属品としてついているのが普通だが、バルブ口の種類に注意が必要だとしています。
「ランプ」は、ダイナモランプが必需品になっているといいます。ダイナモランプは6V6Wか6V3Wを使いますが、当時の日本の道路行政はまだ悪く、6ワットは必要だと説明しています。
「アクセサリー」は、機能的や実用的なものではなく、多分に趣味的なものとして紹介しています。
「サイクリング・メモ 初めて自転車を買ったとき こんなことに注意しよう」
「サイクリング・メモ」は「初心者のために」と銘打った、サイクリングを始めたばかりの人に向けた各種の情報を届けるコーナーです。今回は、ディレイラーとランプの調整について解説しています。ディレイラーは、リアのスライドシャフト式変速機の確認及び調整方法を説明しています。ランプについては、ダイナモの取付位置のこととランプが点灯しないときのトラブルシューティングについて説明しています。
「カタログ紹介 カールトン1962年版(イギリス)」
ここでは編集部曰く、日本の自転車を向上させるために、また使う人の目を肥やすために外国製品をよく見て研究するための一助になればとしてカタログを紹介しています。
カールトン社はラレー系列のメーカーで、ハンドメイドサイクルと謳って高級スポーツ車に力を入れています。紹介しているカタログは1962年版で、内容を細かく紹介しています。内容を車種別にみると、「フライヤー」の場合フレームはロード用が4種類とトラック用4種類、完成車は3タイプ出ています。「スプリンター」はトラック競技やショートディタンスタイムトライアルなどのスピード用としている。「カタリナ」は美しい塗り分けと特別マークが特徴で、総メッキの「カタリナスペシャル」もある。「フランコイタリヤ」はロードレーサーで、「クリティリウム」はイギリスタイプとは少し違った大陸スタイルを取り入れたと説明文にあります。「カペラクラブマン」は、精度の良いカペラの軽量ラグを使用したハンドメイドのクラブモデルです。「ニューコリンシアン」は、レイノルド531にカールトンタイプのラグ、楕円ホーク、鍛造クラウンを使用したモデルです。「クーレット」は、細い2本のトップチューブを採用したいわゆるミキストタイプのフレームを採用したモデルです。
「カタログ紹介 エリッテ・ディアマント(東独)」
この会社は東ドイツの自転車メーカーだが、規模は不明だとしています。しかし、このカタログはなかなか楽しそうな絵が書いてあり、説明書きも独・英・仏・伊・露の5か国語で書かれており、輸出を考えたものだと説明しています。ディアマントの各モデルは数字で表されています。編集部による解説文にある各車種を順に紹介すると、「モデル35-705、706、707」はロードレーサー、「モデル35-205」は旅行用車、「モデル35-704」はトラックレーサー、「モデル35-203、204」は高級スポーツ車、「モデル35-253、254」は女子用高級スポーツ車、「モデル35-201、202」は男子スポーツ車、「モデル35-251、252」は婦人用スポーツ、「モデル35-102」はスポーツ仕立ての男子用ロードスター、「モデル35-154」はスポーツ仕立ての婦人用ロードスターとなっています。
「エッセイ 自転車競技その他」
この文は高橋長敏氏の執筆によるもので、自転車競技に関するものを中心に綴っています。最初の話題として、プレ・オリンピックを間近に控え日本チームに好成績を目指して努力を積んでほしいと要望しています。トレーニング関連では、あるクロスカントリーレースで5位入賞した東大の選手の例を紹介しています。この選手は輪行通学をしているとのことで、筆者もトレーニングの一環として自転車による通学を進めています。なおこの当時の輪行とは、文字通り自転車で走って行くことを指しており、現在一般的に言われている自転車を電車などに持ち込んで運ぶこととは意味が違っています。他には、東京都自転車競技選手権大会要項の紹介や、東京サイクリング協会が主催した大島一周サイクリングのこと、琵琶湖ロードレースが中止になったことなどを綴っています。
※目次では掲載ページが68ページからとなっていますが、実際は48ページから掲載されています。
「洛西、原谷を訪ねて」
目次では「口絵 洛西原谷を訪ねて」とでています。本文は53ページから、サイクリング中に撮影した写真と簡単な説明書きが掲載されています。撮影及び記述は山根徳太郎氏です。
「自転車百科事典 エンサイクルペジアヤポニカ 《テ~ト》」
『エンサイクルペジアヤポニカ』は、過去「サイクル」誌に掲載されていたものを、同誌廃刊に伴い、ニューサイクリング誌に続きを掲載することになったものです。筆者は当時、大学の図書館勤務で、仕事の傍ら自転車関係の資料を収集していた方です。取り上げられている語句は、自転車に関する用語・書籍・映画と広範囲で、今回は「タ行」の補遺となっています。
※目次では掲載ページが68ページからとなっていますが、実際は57ページから掲載されています。
「東海道苦闘記」
これは、二人の高校生が真冬の東海道を横浜から神戸までサイクルツーリングをした紀行文です。クリスマスイブの初日は横浜を出発して小田原で昼食、午後3時には熱海に着いたので名所見学をした後で夕食をとってこの日はテント泊します。翌日は朝食後に熱海峠を越えて清水まで行く予定だったが、峠越えに時間をかけすぎた為富士市まで、民家の庭を借りて泊まります。3日目は予定した浜松迄たどり着けますが遅くなったため宿泊場所が見つかりません。しかし、ある食堂で運よく出会った、若いころ自転車旅行をしたことのあるおじさんの家に泊めてもらうことができます。翌日は名古屋まで行き同行者の親類の家に泊まります。そして翌日は休養日として自転車の整備をした後は名古屋観光などして過ごします。名古屋を発つ日は雨でしたが出発することにします。雨は途中で上がり、桑名では別の高校生一行と合流し一緒に走ります。鈴鹿峠は自動車に世話になって越え、この日の目的地である琵琶湖には3時過ぎに到着します。翌日はまた雨の中、京都を目指します。京都では雨の中を京都見学で走り回り、その後奈良へ向かいます。途中パンクしたため奈良市内に入ったのは8時半頃になってしまい、この日は旅館を探して泊まることとします。最終日となる大みそかは、奈良見物をしてから大阪へ向かいます。大阪市内で同行者の変速機が壊れるトラブルにあいますが、何とか最終目的地である兵庫県庁へたどり着きます。その日は旅館を探して泊まり、翌元日は京都の清水寺に初参りし、大阪へ戻って夜行で帰路につきました。
「南房総合宿記」
この記事は、成蹊高校サイクリング同好会による3月に行った合宿の記録です。集合場所の学校に集合した一行は成城学園前を通り、多摩川堤通りから厚木街道を行き、大和、藤沢、逗子、横須賀を経由して久里浜に到着します。一行はここから東京湾フェリーに乗って金谷に渡ります。予定より大きく遅れて午後6時に金谷着となった一行はここから保田経由で鴨川へ向かいます。しかし、この日の完走はあきらめて途中で出会ったトラックに6台の自転車とともに鴨川駅前まで運んでもらいます。駅前の旅館に泊まった翌日は千倉を過ぎ野島崎に寄り、布良のユースホステルで昼食をとります。食事の後は館山を抜けて金谷に入り、フェリーで久里浜へ渡ります。ここからは道に迷いながらも観音崎のユースホステルに到着します。最終日は横須賀、追浜、横浜を経由、中原街道から厚木街道を走って二子多摩川に到着。ここで3日間の合宿は解散となりました。
「交換案内」
自転車や部品の売りたし買いたしのコーナーです。売りたしのコーナーは「BSスカイウェイII型」「エバレストチャンピオン」などの完成車や三光舎の各種部品が出ています。買いたしのコーナーには「トーエイブルーバード」や「アルプスクラブマンエース」のフレームや各種部品が出ています。
「サイクリング東西南北」
このページは、各サイクリング協会並びに各クラブの交換の場所としてニューサイが提供しているページです。今回は「日本サイクリング協会中央講習会」の実施報告と「スポーツ少年団全国研修会」「第五回国立公園大会」の開催案内を載せています。他には全国各地のクラブから寄せられた情報が10件以上紹介されています。
「新製品ガイド」
今回は、輸入ディレイラーとしてユーレーの「モノブロック」「ツールドフランス」「アルヴィ」を写真入りで紹介しています。また、写真はありませんがロッドを前後に動かして変速するタイプのフロントディレイラーも入荷したと紹介しています。日本製品では、日米富士の「富士ツアーデラックス(VTD)」「富士ツアーエイト(CT8)」、東京サイクリングセンターオリジナル製作のチェンホイール等を取り上げています。
「パニアバッグ」
このコーナーは、読者に開放されているページです。今月号はハイテンやクロモリなどフレームの特長についてやユースホステルについてなど、読者からの7件の質問と編集部の回答が掲載されています。他にも紙面に関する要望などが寄せられています。
1963年5月号の裏表紙広告は、日米富士自転車の「富士サイクリング車」でした。
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