ニューサイクリング 1966年5月号(No.23)

本日の1冊

今回は「ニューサイクリング 1966年5月号」を取り上げます。

ニューサイクリングの1966年5月号は、通巻23号です。

この号の表紙は「ファッションと自転車」です。

通巻23号の目次をページ順に追うと、

口絵 街で拾ったディスプレー

18 五人乗り自転車の製作について

23 いじわるせくしょん

24 シクロドパリ マイヤールとユーレ社

32 日本の自転車産業

49 PRコーナー

50 シクリズム概論(1)

52 レース界の話題特集 メキシコへの道・サイクルバッジテスト・東西対抗競技大会

57 自転車競技ア・ラ・カルト

58 スポーツ車、部品の寸法(7) フレームオーダーの要点

63 誰でも出来るスポーツ車のメンテナンス(7)

66 新製品ガイド

68 サイクリング東西南北

70 外誌から パリマッチ、ヴォーグ

72 パニアバッグ

86 本誌特約取扱店

88 代理部だより

となっています。

主な記事の内容を以下にご紹介します。

※各ページの題名が目次と異なる場合は、本文の題名を表記しています。


「五人乗り自転車の製作について」

この記事は、ニューサイクリング1966年4月号の表紙を飾った五人乗り自転車「ゼファートーエイ・ジャイアンツ」の製作記です。ここでは製作に携わった三氏の製作記、東京サイクリングセンターの板倉修氏による「道楽者でなければできない自転車」、鳥山研究所の鳥山新一氏による「技術的な問題」、東叡社取締役の大越善則氏の談話「コンマ5ミリに神経を」が掲載されています。

板倉氏は氏が展示会出展の為に五人乗り自転車を構想し、1966年の元旦に東叡社社長である打保梅治氏の浦和にある自宅を訪れます。板倉氏は構想を打ち明けると打保氏は「やりましょう」と即答します。板倉氏は翌二日には鳥山研究所に行き、自転車の設計を依頼します。鳥山氏も二つ返事で引き受けますが、翌日の一月三日に打保氏が急逝してしまいます。板倉氏は意気消沈しますが葬儀が終わった後に東叡社の全員を集めて話し合い、製作を継続することが決まります。板倉氏はその後、特別な部品の調達の為に杉野鉄工所の杉野社長のもとを訪れ、80Tのギヤ板を調達した顛末も綴っています。

鳥山氏は五人乗りの設計を担当しますが、それ以前に打保梅治氏から昭和39年の東京オリンピックを目標に「五輪マーク型フレームの五人乗り」自転車の設計依頼を受けていました。その為、基本的な問題はほぼ検討済みで残るは実際面での問題点でした。その問題点は大まかに「パーツの問題」「フレーム材料の問題」「フレーム小物の問題」でした。パーツは自転車のものに加えてオートバイやリヤカーの部品を改造し、フレームの材料や小物類はトーエイでの自家生産を中心に対応して解決しています。

大越氏の談話は、特にフレーム製作における苦労話です。従来品が使用できるのはごくわずかで、前後フォークは手でしぼり、爪は10ミリの板から抜いて製作しています。溶接では特にハンガー位置とチェンライン、コンマ5ミリでも狂うとチェーンがかからなかったりゆるみが出るので、特に気を配りこの工作に相当の時間をかけています。そして大越氏は、工作に当たった星野、関根、渡辺の三名とともに10日間の間残業をして完成させたと語っています。


「シクロ・ド・パリ」

これは、杉野安氏によるパリ訪問記です。今回は「マイヤールとユーレ社」と題して両社の訪問記を記しています。初めに訪れたのはアンヒビルにあるマイヤール社で、筆者は最寄りのノイシャーテルアンブロイ駅から迎えの車で四つある工場のうちの一つへ向かいます。工場見学の後はクルマで一時間ほどのところにあるアンヒビルの本社へ移動します。本社工場の見学と会食を終えた筆者は社長自らの運転でマイヤール氏の自宅を訪問します。ここではマイヤール氏が通勤に使用しているルネルスを見せてもらいます。マイヤールが所属するフレクサグループでは三か月に一度200kmのサイクリングランをするのが恒例で、新製品や試作品を愛用車に付けて走り、経営者が自分の足でテストするといいます。翌日はパリ郊外のユーレー社を訪ねます。ここでも工場見学をしますが、そこはメーターの組み立て工場で見たかった変速機の工場ではありませんでした。その代わり、設計室で試作中の新型アルビーを見ることができました。これは筆者曰くサンツアースキッターに似たタイプのものだといっています。


「日本の自転車産業」

この記事で紹介していいるのは1965年11月に自転車産業振興会が発行した「グラフで見る日本の自転車産業」です。その内容は、当時の日本の自転車産業の実状をグラフで表していて、16枚一組のリーフレットとなっています。記事では「年別輸出実績」「仕向地区別輸出実績」「自転車産業振興補助事業と自転車産業振興協会」の三つを除く「自転車の生産実績」「自転車の工場数と従業員数」「車種別年間平均販売台数」「一世帯あたり自転車平均所有台数」「主要国における自転車の普及状況」「世界主要国の生産量」「世界主要国の輸出額」「自転車4大生産国の消長」「アメリカにおける自転車の生産と輸入」「アメリカ市場における日英独の競合状況」「対米輸出10年の歩み」「イギリスにおける自転車の生産と輸出」「各国の自転車道路」の各ページのグラフを掲載するとともに、その内容を解説しています。


「PRコーナー」

このコーナーではカタログや書籍を紹介しています。今回は「サンプレックス英文カタログ」「アルプスカタログ」「ホルクスカタログ」が取り上げられています。


「シクリスム概論 自転車競技の基本」

これは今月号から始まった鳥山新一氏の執筆による、自転車レース全般に関して根本的な問題から手掛け、客観的、体系的に整理してまとめ上げようと企画した連載です。初回はまえがきとして、鳥山氏のレースに関する調査・研究発表の実績と、この企画の全体構成を紹介しています。


「レース界の話題・特集」

ここでは自転車競技に関する話題を3件取り上げています。

一つ目は「メキシコへの道」です。ここでは東京オリンピック後の選手の状況から次回メキシコオリンピックまでの必要な事柄の提言までを述べています。まず、東京オリンピックに参加した選手はほとんどプロに転向するか競技から離れてしまっていて、東京オリンピック三年前と同じ状況に戻ってしまいました。そこで日本アマチュア自転車競技連盟は、選手にプロ入りをとどまってもらうよりも新たなアマチュア競技者を養成する為に指導組織を確立させることにした。記事ではそれに対する実際の動き、また競技力向上のための合宿の実施について、さらにメキシコに特有の高度対策について競技連盟への要望を述べています。

二つ目は「サイクルバッジテスト」です。これは自転車競技連盟が自転車競技者を開拓する目的で実施する自転車競技基本能力検定です。検定は1000mタイムトライアルで行い、タイムによって1級(1分21秒)から6級(完走者)まで色別のバッジと合格証が与えられます。開催場所は自転車競技場に限らず、使用自転車も何でもよく、これまでに233回実施され合格者数は11,000名以上となっています。

三つ目は「東西対抗自転車競技大会」です。これは立川競輪場で開催された、前年からの持ち越しとなった地域対抗と東西対抗の大会と結果のレポートです。


「自転車競技ア・ラ・カルト」

このページは、ベロ・クラブ・トオキョウが担当する連載です。今回は「メキシコを目指す選手達」と題して、東京オリンピック後にオリンピック候補を選出して強化合宿を行っていることを伝えています。新メンバーは大学1年生が中心だが、上半身の弱さが共通の欠点であり、鍛錬が必要だといっています。また、国体高校の部で好成績を残していた選手がプロに転向してしまったこともアマチュアレース界にとっては損失だと伝えています。


「スポーツ車、部品の寸法 〔第7回〕フレームオーダーの要点」

サイクリングの楽しみは走ることはもちろん、自転車そのものをいじることも楽しみの一つです。この企画は主として寸法の面から自転車と部品およびその関連について解説していく連載となります。今回は読者からの質問に回答する形をとって、フレームをオーダーする際に注意すべき点を寸法や角度の面から解説しています。

※本文では題名で「第7回」となっていますが、正しくは第8回となります。


「誰でも出来るスポーツ車のメンテナンス 第7回」

これは、横尾双輪館の横尾明氏の執筆による連載講座です。今回はスポークとリムの修理について書いています。まずは予備知識としてスポークとリムのサイズバリエーションについて当時の主だったものを紹介しています。次に振れの修正方法のうち、横振れと縦振れそれぞれの修正方法を解説しています。また、ここではリムが変形した場合の修正方法も紹介しています。最後はスポーク交換時の注意点と、補修用スポークが無い場合の応急修理の方法を説明しています。

※本文では題名が「第6回 チエンホイールの交換」となっていますが、これは前回の題名が修正されていない誤りで、正しくは「第7回 リムの修整」となります。


「新製品ガイド」

こちらは自転車部品や用品などを紹介するコーナーです。今回はサンプレックスの「クリテリウム新型」、ブリヂストンの「ファイブエリート」と中学校の技術・家庭教育の教材用自転車等を取り上げています。


「サイクリング東西南北」

このページは、各サイクリング協会並びに各クラブの交換の場所としてニューサイが提供しているページです。今回は協会、サイクリングクラブ、大学クラブ、少年団から情報と、サイクリスト向けの宿泊施設が開設されたことを伝えています。


「外誌から パリマッチ、ヴォーグ」

ここでは海外の雑誌で自転車を取り上げた記事を紹介しています。ひとつは世界的に知られたファッション誌の「ヴォーグ」で、自転車を全て白黒の市松模様に塗り分けてモデルの足と組み合わ「二色の自転車」と標題をつけた靴のデザインをテーマにした作品です。もうひとつは「パリ・マッチ」というスポーツ専門紙で、この号ではツール・ド・フランスでのアンクテイルとプリオールの戦いの模様を5ページのカラー特集で届けています。


「本誌特約取扱スポーツ車販売店」

ここには、ニューサイクリング誌を販売しているスポーツ車販売店が掲載されています。今回は北海道から鹿児島県まで30都道府県の店が紹介されています。


「交換案内」

目次には出ていませんが、77ページから85ページまで「交換案内」が掲載されています。なお、今回はページの進みが今までと逆になっています。


「代理部だより」

サイクル出版社で取り扱っている書籍等の取扱品の紹介コーナーです。今月号では日本サイクリング協会発行の「銀輪にうたう」と「誰でもできる楽しいサイクリング」「自転車競技入門」他と、雑貨としてイギリス製のミニチュア自転車が紹介されています。


1966年5月号の裏表紙広告は、日米富士自轉車の「富士ツアーフォア 富士セフティファイブ」でした。

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