本日の1冊 今回は大学生によるチベットへの旅を記した「ヒマラヤペダル越え」を取り上げます。 この本が出版されたのは1989年ですから30年以上前のことです。当時大学生であった著者が自転車でヒマラヤのベースキャンプを目指す話です。 若者が海外の自転車ツーリングに挑戦するという話は多くは無いですが、聞かない話ではありません。しかし、その目指す先がヒマラヤのベースキャンプとなるとちょっと様子が変わってくると思います。ベースキャンプは山頂から3,700mも下ということですが、それでも標高は5,000m以上です。富士山の山頂よりはるか上、しかもそこまで道が続いているというのですから、日本にいては経験できない世界ですね。 この冒険に使用された自転車も愛好家としては興味を惹かれるもので、その仕様が本文にあるので引用します。 「クロモリ鋼ダブルバデットチューブ、石渡022のフルセットで組んだフレームは、サイズは545ミリ、その他の使用は標準仕様。(中略)ラグはコンチネンタルカットで、ヘッドラグとフォーククラウンにはメッキを施し、とても美しい。」となっています。この後も工作や直付け、その他の特徴が述べられています。そして、この自転車は「スポーツサイクル・アルプス」でオーダーしたものだということです。 道のりは、中国経由でチベットへ入り、ヒマラヤを目指すルートとなっています。秘境といえるような場所でしかも高所ですから、道中の困難さが文章から伝わってきます。ベースキャンプへ向かう最後のほうは、自転車での走破を断念してヒッチハイクを余儀なくされるような場所もあったようです。 日本にいては経験できない高所へのサイクルツーリングは誰もが挑戦できるものではないでしょう。同書を読めば、それがどのようなものであるのか感じるこことができるのではないでしょうか。